やっぱり「条例」は必要だよ
NPO法人自立生活センター ぶるーむ
田中 雄平
来年四月から、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「差別解消法」または「法」という。)がいよいよ施行されます。差別解消法は、国連の障害者権利条約に日本が批准(条約が求める内容を国内で実践すると約束すること)するために進めた国内法整備の中でも、最重要のものであり、この施行にともなって社会がどのように変わっていくのか今から期待しているところです。
北九州市でも、障害を理由とした差別の解消のための取組みを通じて"共生のまちづくり"を進めるため、障害者本人(身体障害者、知的障害者、精神障害者)、障害者団体、民間事業者、学識経験者、地域関係者等の様々な分野の方が、それぞれの役割や連携について話し合う「北九州市障害者差別解消法連絡会議」(以下「連絡会議」という。)が開催されています。
連絡会議は、①相談等体制会議 ②事例研究会議 ③普及啓発会議 ④情報保障会議 ⑤バリアフリー会議 の五つの会議で構成され、私は七月十三日と八月二十七日に開催された第三回及び第四回の相談等体制会議に傍聴人として参加しました。
現在、相談等体制会議は、障害者差別に関する窓口を行政の直営にするのか民間委託にするのか、また既存の相談機関や相談員がそこにどのように絡んでいくのか等を話し合っています。
二回の傍聴いずれにおいても私は発言の機会を得ましたので、その内容を中心に会議傍聴の感想を述べたいと思います。
まず、差別解消法上、行政や事業者は社会的障壁(例えば段差)を取り除くため合理的な配慮(例えばスロープ設置)を実施するよう求められますが、合理的配慮を引き出すには障害者の意思表明が前提となっています(差別解消法第7条第2項、第8条第2項)。差別に対して「ノー!」と自己主張できるエンパワメントされた障害者の存在が前提となるわけです。(注1)
しかし、自らが差別されたときにそれを「差別だ」と言える障害のある仲間はまだ多くないと思います。
当事者団体が既に行っているエンパワメントに関する取組みを新しい相談体制の中でどう位置づけていくのか。差別解消法の成否を握る大切な論点ですが、行政の明確な回答は出ていません。
次に、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の実施」が法で規定されましたが、具体的に紛争が生じたときにどの機関が権限を持って助言や勧告を行い、解決を図るのか。差別解消法はほとんど何も書いていません。唯一あるとすれば、法第十二条の大臣による助言等ですが、地方の障害者にとって大臣はあまりにも遠い存在です。
実際、相談等体制会議の委員である法務局の人権擁護の係も、北九州市障害者基幹相談支援センターも、差別解消法は出来たが自分たちに紛争解決についての強制力がないのは今までと何ら変わっておらず、紛争を具体的にどう解決していくかが課題であるとの発言がありました。
紛争を解決するためのチカラをどの機関に、どのように備えるのか。国の法律である差別解消法にその規定がないのであれば、やはり千葉県のように市独自の条例を作るしかないのです。千葉県では、最終的に県知事(調整委員会)に権限を持たせ、具体的な紛争解決を実現しています。
国の差別解消法に関する基本方針でも、地方自治体において地域に即した条例を制定することが推奨されています。
もう機は熟したと思いませんか。
北九州市にも、障害を理由とした差別をなくすための条例を作りましょう!
(注1)国の差別解消法に関する基本方針にもあるように、意思表明には、障害者本人からのものだけでなく、障害により本人の意思表明に困難が伴う場合における支援者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。
(注2)北九州市トップページ > くらしの情報 > 福祉・人権 > 障害者支援 > 付属機関等の会議開催 > 北九州市障害者差別解消法連絡会議